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「あれ、この人……」
俺はキーボードから手を離した。目を大きく開き、固唾を飲み込む。嫌な汗が出てきて、着てるTシャツが張りついた。
何かの間違い――いや、俺の考え過ぎならいいんだけど……。
★☆
「おはよう、潤」
「おはよー……」
学校に向かう通学路で、同じクラスで幼馴染の雪峰梓と合流。家が近所だからよく一緒に登校してる。
「ちょっと、欠伸しながら挨拶しないでよ」
「だって、眠くてさ……」
一応、口に手は当てるけど、その掌よりも大きな欠伸をした。梓は呆れた表情で、俺の髪に触れる。
「何だよ」
「寝癖、ついてるよ」
微笑を浮かべて、寝癖をつまみ上げられた。
「引っ張んな」
乱暴に手を振り払うと、イタズラを楽しむかのように梓は笑う。こんなやり取りも昔からで、他の奴らからしたら羨ましいんだって知った。
幼い頃から一緒にいるから気付かなかったけど、梓はモテる。
モデルみたいに顔が小さくて、男女問わず優しい。おまけに運動神経もいいから運動部からも人気がある。肩にかかるぐらいの茶髪は、ふわっとしていてプードルと見間違う程に愛苦しく――確かに目もちょっと似てるかもしれない――、隠れファンが多い、らしい。だから、こんな冴えない俺が近くにいるのが、周りは信じられない、らしい。
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