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どうしよう、街灯の少ない闇のような通りを選びすぎて、娼夫の街へ来てしまったのかもしれない。窓灯りの下に継ぎ接ぎだらけの、ボロ布をまとった男たちが立ち並び始め、その周りを身なりのいい男たちが取り囲んでる
ガラッ、二階の窓が開いた
お願い、気付かないで。灯りが届かないくらい小さく、ゴミ置き場の陰でうずくまった
「働け働け! 一番客を取った者に休日をやる」
窓際の男が怒鳴っているのだろう。上からだみ声が響いてくる
「最低十人だ。取れない者は家畜の餌にするぞ。穴が裂けるまで客を取れ! そこ、逃げるな! 構わん、やれ」
悲鳴があがる。突き飛ばされた誰かの素足が見えた、小さく、可能な限り小さく丸まった僕の近くで、ビシッ、人を鞭打つ音が響く
「止めて ひぃっ、 ごめっ うああっ!」
「お前らの替えは何体でも作り出せる。精子提供してやった創造主様に反抗する壊れた玩具にはないのだ、生きる権利がな」
鞭打つ音は止まらない、泣き声混じりの悲鳴も止まらない
怖い、怖い
外へ出れば助かると思ったのに、違う。野次馬が群がり、口々に作り物のくせに、人の偽物め、玩具の分際で人間様に逆らうからだ、痛めつけられる娼夫に酷い言葉を浴びせかけている
どうして? ヘソがないから人じゃないの?
小さく丸まり、強く目を閉じて耳を塞いでも僕の鼻や口や耳の穴から、人の悪意がどろりと染み込んできた
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