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出産可能者保護法の発起人はダンジだった 『何をしでかそうとしているのだダンジ!』 血相を変えて田中医院院長室へ乗り込んできた兄、ロバンに一喝されるまでは。デコボコジャガイモのダンジとは異なり、ロバンは端正な風貌だ。上流階級の暮らす地域で聖マリアージュ医院長として働き、政治家にも顔が利く。協力を得られれば鬼に金棒、そう思ってたのだが鬼の形相でダンジを怒鳴りつけてきた 『な、何がです?』 ダンジは肩を竦めた。小さい頃から大人になった今でも、頭脳、運動神経、人々の信頼と何一つバロンに勝るものを持っていない 『白々しい。試験管製造禁止を連邦政府へ訴えでたくせに』 『求めているのは出産可能者保護法です』 『同じことだ。試験管は上流階級の者しか製造できないことは知ってるだろう。お前のしようとしてることは、聖マリアージュ医院の経営悪化を招く。上流階級との信頼関係が大事なんだ、苦労して築き上げた絆だぞ、兄の苦労を弟のお前が壊してくれるな』 激しい口調でダンジに詰め寄り 『出産可能者保護法はすぐに取り下げろ』 命じたバロンが苛々と 『スタッフが院長室を覗き見か! 躾がなってない、退け』 押し退けようとした男は田中医院のスタッフじゃなかった。出産可能者保護法制定支援者だ。それも、発言力と影響力は上流階級も無視できない実力者だ。彼が関わっている限り、出産可能者保護法撤回は有り得ないとバロンへ伝えようにも、ダンジは男に手で言うなと制されてしまい、未だに男の正体をバロンへ伝えられずにいる
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