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充電を終えた医療ロボットと医療スタッフが入れ替わる夕刻、田中医院に連邦司法警察判事、近衛ジョン警視正が来訪した。おずおずと受付のトーマが産婦人科に顔を出し、ダンジに来訪を告げて後ろを振り返る。ダンジが目を向ければ、穏やかでありながら強い覇気をも放つ男が遠慮がちに、産婦人科入り口に立っていた 「お久しぶりです。近衛司法警察判事」 出産可能者保護法の認可前、試験管ベイビー違法就労取締りへと司法警察判事は娼夫の街へ乗り込んだ。負傷者の手当てを依頼され、田中医院の医師数名と、医療ロボットを派遣して以来の再会となる。懐かしさと、判事の手伝いをした興奮に踊る胸を押さえ、小走りに駆け寄ったダンジは挨拶のため右手をのべた 「受付の者にダンジ先生は立ち働きっ放しと聞いた。お疲れであろうに休ませてやれず申し訳ない」 その手を取られ、軽く唇を寄せた近衛ジョン警視正に戸惑いが隠せない。ダンジのジャガイモ顔は真っ赤だ 「彼は吾川アニス」 取られたままの手と近衛ジョンの顔を行き来する視線を意に介さず、近衛ジョンは連れを示した。吾川アニスは近衛ジョンに紹介されたダンジより、手術を終えたエイジと彼に寄り添うトーマが気になるらしい 「若輩者ですが仕事は出来るのですよ」 悪戯っぽく笑んだ近衛ジョンは、ダンジからエイジたちに視線を流し、ダンジに目線を戻した。ダンジの吐く息が震える、取られたままの手も 「それで、田中医院にも新人がいるようですね、彼はいつからここで働いているのです?」 「いつ、から?」
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