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近衛ジョンの視線はふたたびエイジとトーマに向いている。エイジと近衛ジョンの面識はあるので、問うているのはトーマのことだろう。視線に気づいたエイジがトーマの肩を抱き、ダンジたちに近づいてきた。ダンジの手から近衛ジョンの温もりが消え
「こんにちは、近衛司法警察判事。ダンジ先生と積もる話がおありでしょうが、夜が更ける前に解剖室へ移動しませんか」
近衛ジョンとエイジの手が重なる。勘違いはしていなかった。ジャガイモに挨拶以外の温もりはえられることはないと、承知している。ダンジは手をさすり、近衛ジョンの温もりを素早く消した
「夜道は危険ですからね」
近衛ジョンに続き、ゴツい吾川アニスがエイジの手を包み込み、熱っぽい視線をエイジの後ろへ身を隠すトーマに注いでいる
「責任を持ち自宅までお送りします」
「必要ありません。僕たちは病院の中庭を挟んだ西側に住み込んでいるので」
「エイジさんはダンジ先生と暮らしていたように記憶しているのだが」
エイジの言葉を遮った近衛ジョンは、エイジと向き合った
「違法就労取締りの協力を得る前日までは」
「そうでしたね」
「その受付の子も不在だった」
「そうでしたね」
「職業柄警戒されることに慣れているのだが、その子は人一倍警戒心が強いように思う。自ずから人前に立つ仕事を望むタイプに見えない」
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