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『お客様がおいでです』 解剖室にべンジャミン・トーマの切迫した音声が囁き、すぐに切れた。内診台の上で脚を開き、出産適合手術を希望した試験管ベイビーに、麻酔が利き始めた頃合いだ。当人は夢の中にいて、ピクリとも動かない 「また日本州警察か。病院で捜査官ごっこを楽しむのは止めて欲しいね」 田中医院の面々は手術の中断を迫られるのにも慣れてきた。エイジが壁の隠し戸を開け、外したゴム手袋をゴミ箱へ投げ込む。そこへ、ナイトとクレイが協力し、エイジの目には、患者の乗る手術台にクレイは寄りかかっていて、押すのはナイト一人のように見えた。壁に手をついたナイトが肩で息を繰り返し 「他にも病院はあるだろ。どうしてここばっかり」 非力なクレイが息を整えながら愚痴をこぼす。汗だくのナイトの背を労りを込めて叩き、大きな布を解剖台へ乗せたエイジが 「田中医院は試験管と人の差別をしないからな。通い詰めれば成果を得られると思ってるのさ」 足早に解剖室を出た 受付のトーマは試験管ベイビーだ。容姿から試験管だとバレはしないのだが、日本州警察に向けられる視線を気にしすぎて、青ざめている。キュッとピンク色の唇を引き結び、瞳を潤ませたトーマの拒絶は、彼の気弱さを強調し、守ってやりたいニュアンスを付け足してしまっていた。俯いていたトーマが顔をあげ、ホッと息を吐く 受付台に肘をつき、トーマをじっと見つめていた男も、エイジに気づき居住まいを正した 「連邦警察日本州犯罪摘発係のルイーズとレイです。覚えておいででしょうか」 レイがそう問いたくなるほどエイジの眼に感情はない。美男子の無表情ほど恐ろしいものはないな、レイがルイーズに耳打ちした
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