4人が本棚に入れています
本棚に追加
「う…そ……。」
作戦は失敗した。
俺もランディも擦り傷一つ与える事も出来ずに、地に伏せられてしまい、シエルも魔法を打ち消され、絶望のあまり力無くヘタリ込む。
「こ…これが…アドラースの力……」
その力を前に全く歯が立たない俺たちに押し寄せてくる恐怖の感情。
仲間達は絶望の渦に飲み込まれていく。
「あ…あぁぁぁ…くそっ!!」
そんな俺達を前に寂しそうな表情を浮かべ、俺達に向けたアドラースの言葉は悲惨なものだった。
「………。
つまらぬ。ユグルトよ。
聖剣の力を使ってみせよ。」
「くっ!」
「やはり…使えぬのだな…。
貴様は昔から優しすぎる。」
「アドラース……さ…。」
悔しそうに聖剣を握る俺に、アドラースは不敵な笑みを浮かべ、シエルに手の平をむけ、叫びながらまるでシエルを握りつぶすように手を握った。
「だから貴様は誰も守れぬのだ!!」
シエルの足元に現れた魔法陣から炎が吹き上がり、彼女を包み込む。
「きゃぁぁぁぁー!!!」
「シェール!!!」
「くそっ!きさ…がっ!!!」
熱さのあまり悶え苦しむシエルに目を奪われた瞬間、今度はランディの胸にアドラースの剣が突き刺さる。
「ランディィー!!!」
一瞬の出来事だった。
鋼でできていたはずのランディの鎧は、持ち主を守ることなく紙のように引き裂かれ…
まるで時がゆっくりと動いて行く様にランディが倒れる。
「た…たすけ…て……
ユグ…」
苦しみ悶えていたシエルも動かなくなり、
俺は、くすぶり、黒く染まったシエルの姿と恐怖に怯えた表情のまま絶命するランディを前に、現状把握が出来ずただその光景を見つめる事しか出来ずにいる。
そんな俺に追い打ちをかける様にアドラースが言う。
「貴様の優しさは、強さではない!弱さだ!!!」
最初のコメントを投稿しよう!