プロローグ2魔王討伐。

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自分の弱さがシエルを…ランディを…犠牲にしてしまった。 現状を理解し始めた時、俺の中で何かが、もろく崩れ去るような感覚と殺意の感情が同時に湧き上がっていく。 「ふははははっ!ぬっ?あれは…」 うっすらとユグルトの手に持つ聖剣に光が灯り、魔王へ向かいゆっくりと歩き始めた。 「おーっ!!あれはっ!」 剣にまとう微かな光。 それは、俺の悲しみと怒りを帯びた聖剣の力。 大きく輝きを増した聖剣を前にアドラースが歓喜の声を上げる。 「そうだ!我をその手で殺めてみせろ!」 アドラースの前に立ち大きく振りかぶり… 「うわぁーーー!!!」 そして… 「ぐおっ!!!」 アドラースを闇ごと切り裂いた。 「ごふぁっ!!?」 激しい血しぶきを浴び、赤く染まるユグルトと、何処かホッとした様子のアドラース。 「そ…それで…いいっ!のだ… ユ…グル…ト…」 前のめりに倒れる魔王アドラース。 その様子を放心した様子で見つめるユグルトに、アドラースは昔2人に向けた優しげな表情で言う。 「ユ…ユグル…ト……。 ありが……とう……。」 魔王アドラースは、自らの滅びが願いだった。 そのために、シエルを焼き殺し、ランディの胸を貫いた。 その願いのために、国を、ユグルトの仲間を犠牲にしたアドラースを許せる訳がない。 俺が聞きたかったのはそんな言葉じゃない!!! 「うおー!!!」 アドラースが死を前にした今でも、けして、消えることの無い怒り。 遺体を何度も突き刺し、そして崩れ落ちる様にその場にひれ伏した。
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