第1章 おうちをつくるんだもん!

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そして、なやは…。 「おじちゃん!おばちゃんから頼まれたのー。」 カゴに入った果物を、元々診療所だった廃墟に持っていく。 吹き飛ばされた街ではあったが、この診療所は街より少し離れた場所にあった為、窓ガラスが割 れた程度だ。 「すまないねぇー。」 そこには足を怪我した優しそうな男がベッドに寝かされ、窓辺から外を見ていた。 「おじちゃん。お足いたいのー?」 「うん。逃げる時に崩れた家に足を挟まれたんだ。」 「いたそー。」 おじさんはとても寂しげな表情を浮かべ大きくため息をつく。 そして、動かない足を撫でながら言った。 「なやちゃんみたいな小さな子も頑張っているのに、情けないよ。」 「しかたないよー。 んーとね!私もね。痛いのやーだから! おぢちゃんも痛いのやーでしょ? だから、いーよ!なやがおぢちゃんの分まで頑張るから!」 とても朗らかな表情で慰められたおじさんも、吹っ切れたように気合が入ったようだ。 「ありがとうなぁー。 でも、なやちゃんみたいな小さい子が頑張ってるんだから!俺も早く良くなって頑張らなきゃな!!」 際ほどの悲壮感など消え、笑顔でなやの頭を優しく撫でる姿は、まるで別人のようだ。 「うん!えへへまた撫でられちったぁー。それじゃあ!行くねぇー。」 「また、あそびにいらっしゃい。」 「うん!バイバーイ!」 なやは、おじさんに大手を振りながら診療所を後にする。 丁度時間は12時頃だった様で、昼を伝えるラッパが鳴り響く。 「あっ!ご飯の時間だ! お兄ちゃんとこ行かなきゃ!」 なやは、まるで空を飛ぶかの様に手を広げ、街の中央へと走り出した。
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