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「魔王アドラース!
あなたは本当に…もう…人々と共に生きるつもりはないのですか?
いや、先代勇者アドラース!」
現魔王であるアドラースとは、先代勇者であり、俺の…いや…俺とランディの兄貴分だからだ。
「………。
その名前で……呼ぶなぁー!!!」
魔王は、ワナワナと震えながら怒りを露わにし、激しい闇の嵐を巻き起こす。
「くっ!」
「きゃっ!!」
「うぉっ!?
バカ野郎!それは明らかな挑発だろ!
もう、あれは優しかったアドラースさんじゃないんだ!」
ランディの言葉に呼応するように魔王アドラースは左手で顔を隠すと右手を俺達に向けると不敵な笑みを浮かべる。
「いかにも!
我は魔王アドラース!
先代勇者はもう死んだ。
もはや、お前達人間の為に先代魔王を倒した勇者はいない。
貴様ら人間共のせいでなぁー!!」
もう元のアドラースには戻らない。
頭ではわかっているのに、まだ何処かで期待している。
あの、正義感溢れるアドラース兄さんに戻ってくれる事を…
兄さん…。
アドラースは強かった。
その一振りは山を切り裂き、魔法は世界を火の海に変えてしまうほどの威力を誇る人知を超えたエリート勇者だ。
平和が訪れれば、そんな勇者を国が放置しておくわけがなく。
魔王の討伐が成功し、用済みになった勇者を国は処分することを決定。
身に覚えの無い罪に問われたアドラースに、仲間を処刑すると脅し自害を求めたのだ。
もちろん素直に従うアドラースではない。
単身で仲間を救出に向かうも、祖国への愛が邪魔をし実力を発揮する事なく仲間を処刑されてしまう結果となった。
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