第一章 プロローグ

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子供の頃は泣き虫で、いつも遙がいじめっ子から守っていた。 「は~たん」 ちゃんと言えなくて、いつも自分を「は~たん」と呼んで背中を追い掛けて来た幼馴染みは、今でも変わらず自分を追い掛けてくれている。 それが嬉しくもあり、時々苦しくなる 「私も本当に...ズルイな」 ポツリと呟いた言葉にハッとした。 その瞬間、目の前に遙のマグカップを差し出される。 「はい。少しお疲れ様気味みたいなので、今日はお砂糖を少し入れときました」 幸太の笑顔に、遙もつられて笑顔で受け取る。 「ありがとう」 遙の言葉に、幸太は子犬のように嬉しそうに破顔して笑う。 遙は普段、コーヒーはミルクしか入れないのだが、疲れた時や頭を使いすぎた時は少しだけ砂糖を入れる。 そんな小さな変化も、幸太は決して見逃さない。 「はい、これは冬夜さんのです!」 音を立てて、冬夜のカップを幸太が置いた。 冬夜は新聞に目を向けたまま 「サンキュー」 とだけ答えて、コーヒーを口に運んだ...瞬間。 『ブッ』っとコーヒーを吐き出した 「ちょっ!冬夜、何してんのよ!」 遙が慌てタオルを渡すと 「ふざけんな!」 冬夜が叫んだ。 すると幸太は無視して 「何がですか?」 と答えPCを立ち上げている。 その幸太の態度を見て 「俺が気に入らないなら気に入らないで結構だけどな。コーヒー1杯まともに入れられないで、何しに此処に来てんだよ!仕事と私情を分けられないなら、とっとと辞めろ!」 冬夜は叫ぶと、ジャケットを掴んでドアへ歩き出す。 「冬夜、何処に行くの?」 叫んだ遙に 「缶コーヒー買ってくんだよ。こんなクソ不味いコーヒー入れられるんなら、2度と此処のコーヒーは飲まねぇよ!」 と、振り向きもせずに叫び、ドアを荒々しく閉めて出て行ってしまった。 遙は冬夜のカップに口を付けると、激甘コーヒーに思わず幸太の顔を見る。 幸太は泣きそうな顔をして遙を見つめていた。 「これ、どういう事? 冬夜、甘い物が嫌いなの知ってるよね?」 遙は静かに呟く。 幸太はそんな遙に俯くと 「だって...」 とだけ答えて黙り込んでしまった。 遙は溜息を着くと 「幸太、ちょっとこっちに座りなさい」 自分のデスクの前に座らせ、遙はデスクに腰掛けた。
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