OOP-ARTS(オーパーツ)

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 年月日を扱う処理のソースコードを確認していって何かおかしなことに気がついた。  ソースコードに残されたコメントを見ると「新元号対応版」となっており、ソースコードに書かれた元号は「平成」となっている。ただし、その横のコメントには「この元号は仮」と書かれている。  それだけなら正式な元号を書いてコメントを消し忘れたのかと思うのだが、気になるのはタイムスタンプだ。  西暦が1988年になっている。  平成は1989年1月からだ。  つまり、このソースコードは平成が始まる前に書かれたものということだ。  平成の元号が発表されたのは昭和が終わった次の日だ。それまでは「平成」という文字は一般には出ていなかったはず。  このソースコードを書いた人はどこで次の元号が「平成」になるという情報を知ったのだろう? 《昭和の時代に『平成』という元号をどうやって知ったのか?》  まるで、本来その時代に存在しない技術で作られたオーパーツのようだ。  Aさんの名前はこの会社では聞いたことがない。会社の古参の人に確認すると10年ほど前に会社を辞めて独立したとのこと。  Aさんについては色々と噂があったようだ。仕事で使う新しい技術なのにまるで昔から知っているかのように精通しているとか、その人が手を出したものはすぐに社会的な流行りものになるとか。まるでこれから起こることをあらかじめ知っているかのようだったらしい。  Aさんに興味を持った自分はAさんの名前をネットで検索し、Aさんの会社と連絡先を調べ、会う約束を取り付けた。  夜でも大丈夫とのことで、仕事は定時で切り上げAさんの会社へと足を運んだ。  ベンチャー企業が多く入るビルの一室にAさんの会社があった。
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