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ビバークの夜
雪が止まない。小屋を出るときには晴天だったのに、選りに選って稜線を歩いているときにホワイトアウト。目にも刃のような雪が飛び込んでくる。ゴーグルを下ろしたが、今度は視界不良に拍車がかかる。ゴーグルを頭の上に戻した。
舌打ちしたい気分だった。
そうこうしているうちに山は積雪によって姿を変え、完全に下山ルートを見失ってしまった。
いったい風速何十メートルなのか。猛烈な風を受けてしばしばピッケルを突き立て耐風姿勢を取らざるを得ず、凶器と化した雪と風は俺の体温を奪っていく。功名心にかられての単独行などをしたことをようやく後悔し始めていた。薄暗くなってきた。もうこれ以上進むのは無理だ。
俺はヘッドライトを装着し日没に備えた。そして雪が深そうなところを探し、雪洞を作るためにスコップで雪をブロック状に切り出し始めた。
この雪がやんでくれればいいが。少しでも装備を軽量にするために食料も普段より少ない。
もう少しだ。スコップで更に雪を出して、底と天井を固める。
すでに感覚のなくなった手でザックからツェルトを取り出し、入り口を覆い、切り出した雪のブロックで重しをした。
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