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巡りくる冬
バチンとストーブの薪が爆ぜた。山の冬は早い。
つい数日前まで秋の陽光を透かして金色に輝いていたブナの林はほとんど葉を落とし、急に冷え込みが強くなった。それなのになぜか今日は暖かさを感じる。
「今日あたり雪が降るかもしれないな」
「そうですか。そういえばそんな気もするわね。積もるかしら」
妻は屈託なく答え、夕食の準備に余念がない。今日は山荘の長田君がやってくるのだ。ああ、やってきた。家の前が騒がしい。おや、何かゴンの吠え方がおかしい。
「ごめんください」
と声をかけて入ってきたのは、山荘の長田青年ではなく、山岳救助隊の長田氏と、連れの若い人であった。長田青年の姿はなかった。
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