転ばぬ先の杖
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「山行予定が狂ってしまいましたね」 わたしは男性に声をかけた。男性は神妙な面持ちで、首を横に振った。 「随分と昔からここで眠っていたように見えます。家に帰らせてあげることができてよかった。僕の家はこのY県なのでいつでも来られますからね」 と小声で言った。 「見上げたものですな」 わたしは賞賛の目で小柄な中年男性を見た。また、長田君の目と合った。
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