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A「おや、あなたもいらっしゃったんですか」
B「どうも。毎年この季節はお互いに忙しいですね」
A「ええ、本当に。ですがあなたとわたしが同じ時、同じ場所にいるとは珍しいですね。……それで、この男の子の具合はどうですか?」
B「ずっと寝てますよ。『お母さん、お母さん』って時折魘されて」
A「それはそれは」
B「この子も災難ですね、あたなと私の両方に魅入られるとは。この子の前はどちらに?」
A「この子の友達ですよ。元気な男の子でしたが、今ではすっかり大人しくなって。最近の子供は昔と違って貧弱ですね」
B「流石ですね、あなたにかかればどんな人間もイチコロだ」
A「お互い様ですよ。……さてと、それじゃあ私も仕事しますかね」
B「ご一緒しましょう。上と下どちらにします?」
A「では私は下を」
B「じゃあ私は上ですね」
ベッドの上で身動きも取れないほど衰弱した男の子は弱弱しい声で母親を呼んだ。その身体は内側から徐々に蝕まれていき、室内に聞こえるのは荒い呼吸だけだった。
「先生、うちの子はどうしたんでしょうか?」
「インフルエンザとノロですね。最近の子供は免疫力が下がってますからお大事に」
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