第三章 これが恋ってヤツですか?

1/8
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ

第三章 これが恋ってヤツですか?

 ハロウィンが終わり、街がクリスマスムードに色付く頃、玩具売り場は戦場と化する。 「柊! 売り場の商品、在庫確認したのか?」 ストック置き場に入るなり、森野さんが私に叫ぶ。 「あ、今行きます!」 慌てて売り場へ行こうした私の背中に 「言われる前にやれ! この時季は、いちいちお前の面倒を見る時間無ぇんだから!」 と、森野さんの怒号が飛んで来る。 私も最近、やっと幾つかのメーカーを任されるようになった。 私の担当はピクチャーパズルと知育玩具。 売り場に行くと棚に品物が無い所が幾つもあり、慌ててストック置き場から商品を持って来て陳列する。 そんな中 「あの……」 と、小綺麗なママさんが森野さんに声を掛けているのが目に入った。 すると、普段の鉄仮面が嘘かと思う程の笑顔を浮かべて 「はい、何かお困りですか?」 って、ママさんに答えている。 まぁ……ぶっちゃけ、初めて見た時は自分の目を疑ったよね。 いつもムスッとした鉄仮面が、接客となると爽やかスマイル全開な訳ですよ! そんな笑顔が出来るなら、少し位は私等にも笑顔を見せろ!って感じ。 商品説明を受けているママさん、森野さんの本性を知らないから、森野さんの説明に頬を赤らめて聞いている。 一緒に働き始めて、森野さんが物凄くモテるのを知る。 他の売り場の人で、森野さんを好きだと言う噂もチラホラ耳にした。 お店のお客様も、森野さん目当て風の方々も多いみたいだ。 その方々は、絶対に私達には話し掛けて来ない。森野さんが品出しをしていると近付き、声を掛けるのだ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!