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「森野君は真面目やし、男前やからね。ママさんのファンが多いんやで」
って、いつだったか店長が言っていたのを思い出す。
実際、森野さんと仕事をするようになって、販売員はただ品物を出して売れば良いという考えなくなった。
お客様が何を求めているのか?
今年はどんな物が人気があるのか?
女子では?男子では?
又、年齢によっても、お客様が求める物も変わるし、こちらが勧める物も変わって来る。
森野さんの胸ポケットにはいつも小さなメモが入っていて、気になった事や気が付いた事などを、その都度メモしているのも知っていた。
だからなのか、森野さんは契約社員にも関わらず、交渉が一番難しいメーカーを任されている。
「森野君って……、本当にこの仕事が好きよね」
いつだったか、杉野チーフが森野さんに呟いた。
すると森野さんは
「好き……とは違います。ただ、此処は笑顔で溢れているから……、その笑顔に応えたいんです」
売り場を駆け回る子供や、サンプルの玩具で遊ぶ子供たちを見て微笑んで答えた。
「ふふふ……、それが好きって事だと思うけど」
杉野チーフがそう言うと、森野さんはバツが悪そうに顔を歪めて
「俺は、あなたのそういう所が本当に苦手です」
そう呟いた。
「あら! 私は、森野君のそういう所が大好きよ」
親し気に話す二 人を見て、心の奥がザワザワとざわめいた。
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