第一章 運命の出会い

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ただ違うのは、さっきのバンドより遙かに演奏が上手だった。 塞ぎ掛けた手を外した瞬間、綺麗な男性の歌声が耳に流れ込んで来た。 その声はまるで、春の雪解け水のように清らかで美しく、暗闇の中を照らす月の光のように温かい。 両親の事で凍り付いた私の心が、ゆっくりと溶かされていくような感覚に陥った。 私は無意識に立ち上がり、まるで夢遊病者のようにふらふらと歌声に近付こうと歩き出していた。 しかし、会場整備の人に呼び止められてしまい「ハッ」っと我に返る。 優しそうな爽やかイケメンのお兄さんは私の頭を撫でながら 「そんなに感動したの?」 そう呟いた。 言葉の意味が分からずに居ると、その人が差し出したハンカチで自分が泣いている事に気が付いた。 【生徒会役員】という腕章をしたその人は、そっと私の手を取ると 「内緒だよ」 と言って、口元に人差し指を当てて歩き出す。 「?」 不思議に思って付いて行くと、控え室と書かれている部屋のドアをノックした。 「はい」 中から女性の声が聞こえて、ショートカットでスラリと背の高い眼鏡を掛けた女性が現れた。
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