第三章 これが恋ってヤツですか?

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「人を好きになるって、自分の意思とは関係無いから、たちが悪いよね。でもね、本気で好きになれる相手に出会えるのって、かなり難しいと思うのね。だから……、私は柊さんの恋を応援しているからね 」 杉野チーフの手が、優しく私の手をそっと包む。 その時、はっきりと自覚してしまった。 私は、森野さんが好きなんだと。 カケルさんに声が似ているとか、そんな事は私にとってどうでも良い事なんだと気付いた。 ぶっきらぼうだけど真っ直ぐで、仕事に真剣に向き合う森野さんの姿勢を尊敬しているうちに、尊敬から恋へと変わってしまったのだと気が付いた。 でも、好きだからこそ分かっている事もある。 森野さんの瞳は……、誰も映さない。 心は固く閉ざされ、決して誰も受け入れようとしない事。  カケルさんの声に惹かれた時とは違う、森野さんへの感情に戸惑う。 今まで自分がして来た恋愛は、恋愛では無かったのかもしれないとさえ思ってしまう。 森野さんの瞳に映りたい。 もっと、森野さんの笑顔が見たい。 いつも見ている広い背中は、それ等を全て拒否しているように見える。 誰よりも傍に居るけれど、心は遥か遠くにある森野さんを好きになっていた。
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