第四章 すれ違う想い

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 間一髪の所で森野さんが売台を支えてくれたお陰で、誰もケガをせずに済んだ。 杉野チーフと、お手伝いに来ていた先輩が売台を戻して固定した瞬間 「馬鹿野郎! お前、何やってるんだよ! 危うく怪我人を出す所だったんだぞ! やる気あるのかよ!」 森野さんが、鬼の形相で叫んだ。 「最近のお前、ぼんやりしてばかりでやる気が感じられない。やる気がないなら、他の売り場へ異動しろ!」 吐き捨てるように言われて、ショックを受けながら 「すみませんでした」 と頭を下げると 「森野君、怒りすぎだよ。柊さんも、今後は気を付けてね」 そう言って、杉野チーフが必死にフォローしてくれた。 すると森野さんは、杉野チーフを睨み付けると 「大体、普段から杉野チーフが甘やかすから、こいつがつけあがるんです! あなた、チーフの自覚あるんですか?」 と、怒りの矛先が変わってしまう。 「私だって、考えてやってます! 大体、森野君は怒鳴ってばかりじゃない! そんなじゃ、柊さんが委縮しちゃうでしょう!」 「萎縮? こいつが委縮するタマですか?」 「何でそういう言い方するの? 大体、森野君は冷たいのよ!」 ただでさえ、セール前でピリピリしていた売り場が、一気に険悪なムードになる。 杉野チーフと森野さんの言い争いは、どんどんエスカレートしていき、私の事で二人が言い争うのが耐えられなかった。 「もう、止めて下さい! 全部、私が悪いんです。だから、二人で言い争わないで下さい」 必死に叫んだ瞬間、杉野チーフと森野さんが口を噤んだ。
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