第四章 すれ違う想い

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「し……死ぬ……」  お昼休みになり、私は休憩室でぐったりとしていた。  クリスマス一か月前とはいえ、お父さんやお母さん達の子供へのプレゼントに対する思いは凄かった。 戦隊ヒーロー物の人気商品は、開店と同時に階段を駆け上る音が響くと、売り場では商品の奪い合いが始まっていた。 人気のアニメキャラクターグッツに至っては、奪い合いが激しすぎて売台が倒れてしまい、裏で私達販売員が必死に支えるという始末。 ほぼ、開店間も無くで人気商品が完売していた。 お陰様で、午前中の仕事はあっという間に終わり、昼休憩に入った私は食堂で倒れ込んでいた。 「玩具売り場、凄かったね~」 新生児売り場の菊池さんが笑いながら隣に座ると 「お客様の階段を駆け上る音、こっちまで聞こえて来たよ」 と言うと、クスクスと笑って 「どうですか?初めて、クリスマスの玩具売り場の洗礼を受けた気分は……」 と、手でマイクを握る真似をして私に向けた。 「驚きました。凄いです~」 溜息交じりに呟いた私に、菊池さんは苦笑いを浮かべて 「でも、本当の闘いはこれからだよ~」 そう言うと、意味深な笑みを浮かべた。 なんだか食欲を失くして、軽く食事をとった後に私は倉庫の屋上へと向かった。 倉庫はお店から5分位歩いた場所にあり、建物の裏側から屋上へと続く階段がある。
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