第四章 すれ違う想い

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 今日は天気が良いので、私はスマホを片手に屋上へと向かって階段を上った。 誰もいない屋上は見晴らしが良くて、冬の屋上には誰も来ないだろうと、屋上のど真ん中で大の字に横になった。 寝転がって見上げた空は、どこまでも真っ青に広がる青空に白い雲が流れている。 耳にイヤホンを差し込み、スマホに入れてあるBlue moonの曲を流した。  楽器の音にカケルさんの歌声を乗せただけの、まだ未完成の楽曲が流れて来る。 見上げた青空のように澄んだ美しい歌声が流れ込んで来て、目の前に広がるどこまでも抜けるような澄んだ青空に、白い雲がゆっくりと流れる様子を眺めていた。  その時、幼い頃には分からなかった、Blue moon唯一の恋愛ソングが流れて来た。 CDには楽曲が5曲入っていて、4曲は応援ソング的な感じのアップテンポな曲になっていて、そんな中、たった一曲だけ切ないラブソングが入っていた。  まだ幼いカケルさんの声が、切なく愛する人への想いを歌い上げる。 『君の笑顔が見たくて  僕はいつもおどけてばかり でも、君の心は今も 他の誰かを思っている 隣に居るのに…… 君の心はずっと 遠くにいるんだね だからせめて、今は友達でも良いから傍にいさせて……』 思わず小さく口ずさむと、流れる雲へと手を伸ばした。 その時、私の顔を覗き込む森野さんの顔が現れた。 慌てて起き上がると 「すげぇ恰好で寝ているな、お前」 そう言うと、森野さんがお腹を抱えて笑い出した。
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