74人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
お店には制服があって、青いシャツと赤いネクタイに紺のセーターは会社で支給されるのだが、下は自分で用意しなければならない。
ただし、紺か黒であれば、スカートでもパンツでも自由に選べるようになっていた。
しかし男性は、紺のパンツのみと指定されているので、制服の上下が会社から支給されているらしい。
私はキュロットを巻きスカート風に見えるようなデザインの物を履いているので、下着が見える事は無いけれど、慌てて足を閉じて体育座りになる。
「何で、森野さんが此処に居るんですか?」
驚いて呟くと
「はあ? 此処は俺の休憩所」
そう言うと、ポケットから煙草を取り出した。
タバコを咥えると、何処かぼんやりと遠くを眺めている。
「森野さん、タバコ吸いました?」
思わず尋ねた私に、森野さんはハっとした顔をすると
「たまにな……」
そう言ってタバコに火をつけた。
この一連の流れが綺麗で、思わず見つめて居ると
「さっきの歌……」
と、森野さんが口を開いた。
「聞いてたんですか!」
真っ赤になって叫んだ私に
「人聞き悪いな……。聞いていたんじゃなくて、聞こえたんだよ」
と言うと、ムっとした顔で森野さんが私を見た。
ふっと真剣な表情で私を見詰めた森野さんに、ドキリと心臓が高鳴る。
最初のコメントを投稿しよう!