第一章 運命の出会い

6/6
前へ
/88ページ
次へ
その笑顔は本当に綺麗で、私は目が離せなくなった。 するとその人は、私を抱き上げて椅子に座ると、私を膝の上に乗せて 「では、偉大なる俺達ブルムン初の、真実のファン一号に素晴らしいプレゼントを差し上げよう」 そう言うと 「タケ~、あれ取って」 と、恐らくベースであろう人に叫んだ。 「え?まさか……」 驚いているメンバーを無視して、タケと呼ばれた人が手渡したプラスチックケースに入った白いCDを私に差し出した。 「?」 不思議に思って見ていると 「これ、まだちゃんとミキシングしてないんだけど、俺らのCD」 そう言うと、私の手にCDを握らせたのだ。 「俺らの演奏に、カケルの歌をのっけただけの未完成なCDなんだけど、上げるよ」 そう言い出したのだ。 「え!でも私、お金無いし……」 戸惑う私に 「プレゼントだよ。ただ、これは絶対に他の人には聞かせないで。まだ、きちんとした商品にはなっていないから。他の奴らには、きちんとした形で聞いて欲しいからさ。それにこれは、可愛いファンのきみに俺からのプレゼント」 そう言ってくれたのだ。 嬉しくて 「うん、約束する!絶対に誰にも聞かせない。それに、お兄さん達のCDが発売されたら、絶対に買いに行くからね!」 私はCDを抱き締めて叫んだ。 このCDにみんながサインを書いてくれて 『ふじま あすみちゃんへ』 と名前を入れると、白いCDの真ん中にあるプラスチック部分に、円に沿って Blue moon と書かれていた。 しかし……彼等はCDを出す事も無く、その後解散したと従妹のお姉ちゃんが言っていた。 理由は……お姉ちゃんの表情から察して、聞いちゃいけないような気がして聞き出せなかった。 そして……私の持っているCDは、幻のCDとなってしまったのだ。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加