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その笑顔は本当に綺麗で、私は目が離せなくなった。
するとその人は、私を抱き上げて椅子に座ると、私を膝の上に乗せて
「では、偉大なる俺達ブルムン初の、真実のファン一号に素晴らしいプレゼントを差し上げよう」
そう言うと
「タケ~、あれ取って」
と、恐らくベースであろう人に叫んだ。
「え?まさか……」
驚いているメンバーを無視して、タケと呼ばれた人が手渡したプラスチックケースに入った白いCDを私に差し出した。
「?」
不思議に思って見ていると
「これ、まだちゃんとミキシングしてないんだけど、俺らのCD」
そう言うと、私の手にCDを握らせたのだ。
「俺らの演奏に、カケルの歌をのっけただけの未完成なCDなんだけど、上げるよ」
そう言い出したのだ。
「え!でも私、お金無いし……」
戸惑う私に
「プレゼントだよ。ただ、これは絶対に他の人には聞かせないで。まだ、きちんとした商品にはなっていないから。他の奴らには、きちんとした形で聞いて欲しいからさ。それにこれは、可愛いファンのきみに俺からのプレゼント」
そう言ってくれたのだ。
嬉しくて
「うん、約束する!絶対に誰にも聞かせない。それに、お兄さん達のCDが発売されたら、絶対に買いに行くからね!」
私はCDを抱き締めて叫んだ。
このCDにみんながサインを書いてくれて
『ふじま あすみちゃんへ』
と名前を入れると、白いCDの真ん中にあるプラスチック部分に、円に沿って Blue moon と書かれていた。
しかし……彼等はCDを出す事も無く、その後解散したと従妹のお姉ちゃんが言っていた。
理由は……お姉ちゃんの表情から察して、聞いちゃいけないような気がして聞き出せなかった。
そして……私の持っているCDは、幻のCDとなってしまったのだ。
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