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第二章 似てるけど世界で一番嫌いな奴
「……ぎ……らぎ…」
CDから流れる歌声に、何度救われただろう。
あの日の彼の歌声は、いつしか私より歳下になっていた……。
「ひ……らぎ……、ひいら……ぎ」
そう……、大好きな歌声は、こんな感じの綺麗な声だった。
微睡みの中、『バシ!』っと何かに頭をはたかれた。
は!と目を覚ますと、大嫌いな顔が私を見下ろしている。
「げ!」
思わず口から出た言葉を隠すように、慌てて手で口を塞ぐ。
すると、切れ長の整った目が私を見下ろし
「いつまで寝てるつもりだ?もう、昼休憩はとっくに終わっているんだけどな!」
腕時計を見せて叫ばれる。
「すみません!」
私は見せられた腕時計の時間も確認せずに、慌てて立ち上がって透明バックをひっつかむと、自分の配属された売り場へと走り出す。
従業員用の階段を3Fまでいっきに駆け上り
「すみません!遅くなりました!」
肩で息をして戻ると
「え?遅れていないよ?」
バックヤードで、売り場に出す商品の箱にテープで封をしていたパートの木月さんが苦笑いを浮かべる。
「え?」
驚いて売り場の時計を見上げると、時間は14時25分
私が休憩に入ったのは13時30分
休憩時間は1時間だから……。
(やられた!)
悔しさに地団駄踏んでいると、
「何?また、森野君にからかわれたの?」
くすくす笑いながら、杉野チーフがPOPを仕分けしている。
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