第三章 これが恋ってヤツですか?

2/8
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
それを見ていて、私は何故かイライラした気持ちになる。 その度に私は毎回、イライラした気持ちを押し殺していた。 接客している森野さんを見たくなくて、足りない商品を取りにストック置き場へ戻って来ると、すぐ売り場に出せるストックが無くなっていた。 商品の入ったダンボールを空けて新しい商品を出していると、爽やかスマイルを浮かべて接客していた森野さんが戻って来た。  ストック置き場の中をグルリと見回すと、杉野チーフを見つけて駆け寄り 「杉野チーフ、今度のセールの仕入れの事なのですが……」 と言いながら、今回は○○が売れ筋になるかもしれない。とか、売れ筋になると思っている○○は、案外そうでも無いのかもしれない……と話し出した。 森野さんの仕事に対する姿勢は、本当に真面目だった。 正社員では無く、契約社員だというのに……。 だから、仕事中にも関わらず、お客様にモヤモヤしてしまう自分が情けなくなってしまう。  一方、話しかけられた杉野チーフも、森野さんが真面目に仕事に取り組んでいるのが分かっているので、森野さんの発言を結構重要視している。  不良品が来れば、商品を確認して壊れやすい部分やどんな商品なのかをチェックするし、テレビ放映されている特撮やアニメに関しては、新商品の発売日を確認する為だけに録画してチェックしている程だ。  特撮や人気アニメの玩具を取り扱っている玩具メーカーさんは、新商品の発売日を前もって私達量販店には教えてはくれない為、テレビで確認するのが一番手っ取り早いらしい。  そんな風に仕事に取り組んでいるので、うちの売り場で商品知識を一番持っているのは、森野さんだったりするのだ。  杉野チーフのプチ情報によると、いくら赤ちゃん用品を扱うお店とは言え、お客様の大半が女性な訳ですよ。 女性店員とイケメン店員が居たら、イケメン店員に声を掛けるママさんが多いというのも、森野さんの商品知識を爆上がりさせた要因の一つでは無いか?という事だった。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!