第四章 すれ違う想い

2/22
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
思わず『上手いもんだな~』って、関心して見ていると 「何、ぼんやりしているんだよ さっさと他のを飾れ!」 と怒鳴られてしまう。 私は慌てて、細かく仕切られた売台に小さなファイバーツリーや、既に飾り付けられたツリーを並べて行く。 すると背後から 「杉野チーフ。そっちは俺がやるので、こっちの飾りつけをお願いします」 と森野さんの声が聞こえた。 視線を向けると、大きなツリーを売台に乗せようとしている杉野チーフに、すかさず森野さんが手を出して、飾り付けられたツリーを杉野チーフから受取って売台に飾っているのが見えた。 色とりどりのツリーが綺麗に飾られているのに、私の心はどんよりとしてしまう。 いくら杉野チーフから「他に好きな人が居る」と聞いてはいても、それは杉野チーフの気持ちであって、森野さんの気持ちは分からない。 ずっと二人で玩具売り場を切り盛りして来た訳だから、森野さんが杉野チーフに惹かれてもおかしく無いわけで……。 そんな風に考えてしまう、自分の醜い感情を振り払おうと立ち上がった瞬間 「危ない!」 と叫んだ杉野チーフの声と共に、森野さんの身体が私の前に立ちはだかった。 「え?」 状況が掴めずに驚いていると、まだ固定していなかった壁掛け型の売台を私が踏んでしまったらしく、私に倒れ込んで来たみたいだった。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!