第二章 似てるけど世界で一番嫌いな奴

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「杉野チーフ!聞いて下さいよ~!」 私が唇を尖らせて叫ぶと 「はいはい。よしよし、可哀想にね~」 と言いながら、杉野チーフが頭を撫でて来る。 「もう!何で私の教育係が森野なんですか!」 地団駄踏んで荒ぶる私に 「こらこら!呼び捨てにしないの! あれでも一応、先輩なんだから」 と、杉野チーフが私を宥める。 「私、杉野チーフが良いです」 文句を言っている私に、パートの木月さんが笑いながら 「でも……正直、森野君があんなに面倒見るとは思わなかったわよね」 と話しに加わって来た。 「え? 面倒なんか見てくれていないですよ!」 私はそう叫ぶと、指で両目を吊り上げてつり目を作り 「柊~、さっさと仕事しろ! 柊~」 と、森野さんのものまねをした。 すると、最初は笑っていた二人の笑顔が、一瞬にして固まる。 二人の表情に私が固まった瞬間 「へぇ~、俺ってそんな顔してるんだ……」 地の底から這って来たような声が、背後から聞こえて来た。 私が固まったままゆっくり振り返ると、怒り心頭の顔をした森野さんが立っていた。 「ひ!」 思わず息を飲んだ私に 「遅刻しそうなのを助けてやったのに……、良い度胸だな」 ニヤリと恐ろしい笑顔で私の腕を掴むと 「悪口言う元気があるんなら、力仕事でもしてもらおうか」 森野さんはそう言いながら、私の腕を掴んで歩き始めた。 「い~~やぁ~~~」 涙目で叫んだ私を、杉野チーフと木月さんが両手を合わせて見送っていた────。    
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