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第1話
チュンチュン…と鳥が鳴いている声で私は目が覚めた。
「ふあぁ…もう朝なんだ…おはよう」
「おはようございます、お嬢」
私の声に反応したのは、侍従のククリ。記憶を失った時より前から側にいる、お兄ちゃんのような存在だ。――残念ながら、十歳よりも前の記憶がない私にとっては、ククリとは六年目の付き合いになるのだが。
「ほら、早く起きないと朝食を食べる時間が減ってしまいますよ」
「はいはい、分かってるって…ふぁ…」
「それに、今日はお嬢の十六歳の誕生日ですからね。尚更早く起きねばならないでしょう」
「……そう、ね」
そう、今日は今までより盛大に記念されるべき私の十六歳の誕生日なのだ。――というのも、この国では十六歳が成人であるため、一般的にこの歳になると大貴族は大きなパーティを開き、そうでなくとも家庭で普段より豪華な晩餐が出るのだ。
喜ばしい事のはずなのに何故か、胸の奥底がモヤモヤしている。――何故だろう?
「ん?お嬢、どうしたんです?」
ククリが濃紺の髪を揺らし、アメジスト色の目を訝しげに向けてきた。
「……ううん、何でもない」
気のせいだろうと思い、私は首を振って笑うと、ようやくベッドから起き上がり、支度をしてダイニングへ向かった。
さすが十六歳の誕生日、いつもよりも朝食が豪華だった。私の好物であるオムレツやらオニオンスープなどが食卓を彩った。
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