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豪華なのに朝から重くない、絶妙なバランスの朝食に私は感動した。
朝食を食べ終えると、父様は
「誕生日おめでとう、カサンドラ。これでお前もようやく立派な大人だな」
と切り出した。そしてこの言葉とともに一つの箱を差し出した。
片手よりも少し大きい、蓋ができる黒塗りの箱だ。
「ありがとう、父様。……この箱は?」
何故誕生日に縁起の悪そうな黒塗りの箱などを渡してきたのか。気になり聞いてみた。
すると、父様は「十六歳の誕生日だったからか、やっと返してもらえたからね。それに――時が来たから、かな?」と意味ありげに笑った。
やはり分からないので首を傾げつつ、誕生日プレゼントを受け取って「ありがとう」ともう一度言った。
例え十六歳の誕生日であろうと、今年も誕生日を祝ってくれたのは父ひとりだった。母は、もういないから。
母様は、私の幼い頃に亡くなった。とても美しい人だったとは聞くが、実際に顔を見たのは恐らく数える程で、しかも幼い頃に亡くしたので顔は覚えていない。
「……お嬢」
私が途端に顔を伏せたので、ククリは気遣わしげに私に声をかけた。
「大丈夫。だから、心配しないで。……さ、そろそろ行きましょ」
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