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「さっきの私の話聞いてた?婚約なんて面倒なの。そもそも、私が婚約なんてするわけないでしょ。だって――」
――私には、想い人がいるから――。
そう口にできないのがとても心苦しい。だって、私の想い人は……
「ククリー!こっち手伝ってー!」
メイド仲間に手伝いを要請されたので、私の言葉の続きを気にしつつ、そのメイドの手伝いに向かった。
ククリがいなくなったので私は息を吐いた。
「あっぶな……口が滑りそうだった……」
未だにバクバクとうるさい胸を押さえる。
私は彼――ククリへの思いを募らせているのだ。
私は王女で彼は侍従。
絶対に想ってはいけない相手だとは分かっている。それに、相手も同じだ。
絶対に実らない――実ってはいけない恋だと分かっている。
だが、私は彼が好きだ。
記憶を失う前から今まで、ずっと私に付き添ってくれているのだ。記憶をなくしてからしばらくして、そのことを聞いた時、私の胸は高鳴った。
記憶をなくしても私についてきてくれる人がいるんだ。
そう思うと、私は彼が愛おしくなった。
だがこれは、実ってはいけない恋。
私は想いに蓋をし、自分の胸に優しく閉じこめた。
パーティは無事終了し、城に静けさが戻ってきた。
休憩室に入ってようやく一息つけたことに安堵する私だが、しかし気付く。ククリがいないことに。
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