第2話

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「……っえ、ちょっとククリ?どこ行ったの……?ククリ、ククリ!」 一人では広すぎる部屋にこだまする私の声。母様のように彼も私を置いて行ってしまうの……?そう思って私は必死に叫んだ。 「全く……俺はここにいますよ。ちょっと席を外したらこれですもんね」 と憎まれ口を叩きながらククリは休憩室に入ってきた。 「ククリ……良かった、いたんだ」 一息つけたことよりも大きく幸せな安堵から私は思わずククリに抱きついた。 ククリの、優しくふわりとフローラルな香りが私の鼻腔(びこう)をくすぐる。 「ちょ、お嬢……!」 と困惑しつつも、私の様子が変だと気付いたのか私を離すことはなく、むしろ抱き寄せて背中をポンポンと撫でた。 なおさら安堵して、目元が熱くなってきた。 記憶をなくしてから私は怖いことばかりだった。 今まで友達、親友だったかもしれない人のことは忘れてしまって、幼い頃から付き添ってくれていたククリのことすら忘れていたのだ。 父から色々な話を聞いて「そうだったんだ」と思ったくらい。 みんなの記憶に『私の知らない私』がいる。 私の記憶に『私が知っていたみんな』はいない。 だから人は皆、私から離れていった。 そのことがつらく悲しく、そして怖かった。 でも、ククリは私のもとを離れなかった。     
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