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第3話
「……迷惑かけてごめんね」
思わず抱きしめて、しかも泣きはらしたのだ。迷惑しかかけてない。
「いや、迷惑どころかむしろ役得だったというか何というか……」
「え?」
「い、いえ!何でもありません!それより、誕生日プレゼントの箱は開けたんですか?」
「ううん?開けてないけど…」
そういえば、まだお父様からもらった箱を開けていなかったと思い出した。
「一体どんなものが入っているのでしょうね……装飾品とかですかね?」
「分かんないけど……開けてみよう!」
私は箱の中身が楽しみで、ウキウキしながら休憩室の扉に向かった。
その後ろでククリが「……良かった、いつも通り元気なお嬢に戻った」とポツリ零していた。
私たちは早速、休憩室から私の部屋にまで戻った。
「……え、俺もちゃっかりついてきちゃいましたけどいいんですか?」
「うん、ククリならいいよ!さ、開けよ開けよ!」
「……男として見られてないのはちょっと嫌ですけど、まぁいいでしょう」
私は黒い箱の蓋に手をかけ、開けた。すると、中から白い煙が出てきた。
「ゴホッゴホッ……お嬢、大丈夫ですか……っ!」
「……ゴホッゴホッ……」
煙を思いっきり吸ってしまい咳が出て、そして……妙に脳がスッキリした。それはまるで今まで忘れていたことを思い出した時のような……
「……思い、出しましたわ」
私は、全てを思い出した。空白だった十年間……生まれてから十歳までの十年間。
「わたくしは…貴方の婚約者でしたのね、ククリ・ディール殿」
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