第0話

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第0話

暖かな風が吹き抜ける広大な国、アクリス王国。ここ最近は特に大きな戦争もなく、至って穏やかな雰囲気が流れている。 そんな国で一番大きな領地を誇る公爵家の長女、カサンドラ。当時9歳。 母は亡くなっていたが、その分父は優しく、やりたいことはやらせてくれたおかげで、のびのびと暮らしていた彼女。 だが魔女に呪いをかけられてしまう。 それは誕生日のことだった。 毎年恒例行事として、母は一段と気合いの入った料理を作り、父は彼女の喜びそうなプレゼントを見繕って渡す。 いつものように誕生日が楽しく終わると思ったその時。 家に突然、魔女がやって来たのだ。 魔女のトレードマークともいえる大きな帽子を被り、少し動くたびに大きく揺れる豊満な胸を惜しげも無く晒したビスチェを見に纏い、魔女の背丈の半分くらいまでの高さの銀色の杖を持った魔女が。 そしてあろうことか、魔女はカサンドラに呪いをかけた。 その呪いは――記憶を失ってしまうという呪いだった。
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