CANDY POP

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CANDY POP

「おはよう!はい、どうぞ!」 ピンク、黄色、ブルー、黄緑。  カラフルな包み紙のキャンディーが、雨宮ゆりの両手の中で今にも踊り出しそうだ。  登校してきた生徒たちに一人ひとつずつ、手渡されていく。 「相変わらず来るの早いなぁ。ありがと!」  受け取られたキャンディは、みんなそれぞれにカバンの中へしまったり、はたまたその包みを剥がされて口の中へ放り込まれたりしていた。  ゆりは、クラス全員に、にこにこしながらキャンディを渡して回った。 「あっ!雄樹くん、おはよう!」 教室に入ろうとした僕の前に、ゆりが足早に近づいてきた。 そして、嬉しそうにキャンディを手渡してきた。  僕は黙ってそれを見つめたまま、返事もせずに素通りした。  ジャンパーを脱いで、マフラーを外す。 忙しい朝にキャンディなんて受け取っている暇もない。 そして何より、“興味が無い“。  毎朝手渡すのが日課のゆりと、それを黙ってスルーする僕。  高校に入学してからずっと続く習慣になっていた。 「雄樹くん、一度くらい受け取ってあげなさいよ」  周りの女子生徒の中から、亜希子が睨みつけながら僕に話しかけてきた。 「別に、欲しいなんて言ってないだろ」  冷めた態度で答える僕。そうだ。欲しいなんてひと言も言っていないのだ。 なのに、ゆりは毎朝毎朝キャンディを渡そうとする。 高校に入学して同じクラスになり、受け取らない姿勢を貫いて十カ月。 もういい加減諦めてくれてもいいんじゃないだろうか。 なのに、彼女は相も変わらずその習慣を崩そうとはしない。
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