CANDY POP

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「クールな男を気取ってるのか知らないけど、ちょっとヒドくない?」  クラスメートの亜希子は両手を腰に当て、強い口調でこちらへ詰め寄った。 だが本当に、いらないものはいらないのだ。 そうは思いつつも、ふと、ゆりの方に視線を移してみた。  もしかしたら暗い顔をしているんじゃないかと思ったのだ。  だが、そんなことは思い過ごしだったみたいだ。 「あっちゃん、いいよいいよ!今日受け取ってもらえなかったら、また明日ぐわんばるから!」  ゆりは落ち込むどころか逆にファイトを燃やしているようだ。 握りしめた拳を「エイエイオー!」と振り上げたかと思うと、高い位置で束ねられたツインテールが元気良く揺れた。 (マジかよ……)  僕は、眉間にしわを寄せながら、自分の席で頭を抱えた。  正直なところ、ゆりが傍にいると調子が狂う。何だか落ち着かない。  この攻防はいつまで続ければいいのだろう。  クラスが変わるまでだろうか、いや、高校を卒業するまで続くのかもしれない。        ☆ 「ねぇ、ほら美味しいよ?いちごミルクだよ!」  帰り道、黙って歩く僕の後ろをぽてぽてとついて歩きながら、ゆりは嬉しそうに笑って言った。  左側へ廻ったかと思うと、顔の横でイチゴの絵の描かれたキャンディの包み紙をひらひらさせてくる。  鬱陶しいなという顔で、僕はフンと顔を逸らす。 『今日こそは、キャンディもらってもらうんだから大作戦開始!』  またつまらないことを始めたもんだと思いながら、僕は帰りの時間が一緒になることを避けるため、彼女を撒いて図書館で二時間ほど過ごしてから校門を出た。  しかし、どういうわけかそんな僕を、ゆりは校門のところでずっと待ち続けていたのだ。  そこまでしてどうして僕にキャンディを受け取らせたいのだろう。  彼女は今度は逆方向へと廻りこみ、「ほ~らほ~ら」とキャンディを見せつけてくるのだった。  出逢った頃よりも僕の身長が伸びたのだろう。彼女が僕を見るときにはだいぶ上向き加減になるようだ。 「いい加減にしろよ!いらないって言ってんだろ?」 あまりにもゆりがしつこいので、僕は我慢できずに彼女に吠えた。 すると、ゆりはビクッとして動きを止めた。 しゅんと俯く彼女。だが、いらないと言っている人間に何度も何度も言うのが悪いのだ。 僕はムスッとだまったまま歩き続けた。
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