CANDY POP

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 いつものようにコートを脱ぎマフラーを外し、カバンを机の横に掛けていると、亜希子や他の女子生徒たちが僕の前に近づいてきた。 「ゆり、風邪でお休みなんだって。今朝連絡があったわ」 神妙な面持ちでこちらに話しかけてくる。  僕は、「ふ~ん」とだけ返事をした。  あまりにもそっけなく思われたのか、彼女たちはこちらをギュッと睨みながら詰め寄ってきた。 「何なの、心配じゃないの?高熱が出てるっていうのに!」  小犬が吠えるかのごとく顔の前でギャンギャン騒ぎ立てる女子たちを前に、僕は耳を塞ぎ、大げさに迷惑そうにして見せた。 「ちゃんと病院に行ったんなら大丈夫じゃん?そのうち治るだろ」  そう答えながらも、僕の心の中にはほんの少し罪悪感が芽生えていた。  昨日の放課後。  ゆりはずっと僕を待っていた。  彼女から逃げるため図書館に身を隠していた二時間もの間、ゆりはずっと校門のところで冷たい風にさらされていたのだろう。  僕は亜希子たち女子から顔をそむけた。 「ゆりが休みの日はキャンディを受け取らないですむもんね。あんたにとっては気が楽なんでしょ。冷たい男!」  ちょうど始業のチャイムが鳴ったため、捨てゼリフを残して亜希子たちは僕の目の前から立ち去った。  その日一日、僕は授業の内容が頭に入らず、ゆりと出逢ってからのことを思い返していた。      ☆ 『はい、これあげる!』  それは、今日みたいな寒い寒い雪の降る朝。  僕は、高校の門をくぐり、掲示板の前に立っていた。  自分の今の成績では無理だろうと言われていた高校を受験し、その合格発表を見に来ていた日の出来事だった。   受験当日に隣の席になった女の子とたまたま道で一緒になった。  僕が話し掛けたんじゃない、僕のことを覚えていた彼女が突然話しかけてきたのだ。
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