CANDY POP

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『ねぇ、受験会場で隣だった人ですよね?』 『え?そうですけど……』  目の前に出されたピンク色の包み紙のキャンディ。  彼女の薄いピンク色をした手袋と馴染んでいた。   ゆりには人見知りなんていう概念は存在しないのだろう。 受験当日からそうだったが、初対面でいきなりぐいぐい話し掛けてきたことを覚えている。 『もしかして、これから合格発表を見に行くところ?一緒に行こうよ!』 満面の笑みでそう言ったかと思うと、僕の手に先ほどのキャンディをしっかりを握らせた。  勢いに押されたまま、僕は彼女に手を引っ張られて高校へと歩いていった。  予定ではもう少し神妙な気持ちで掲示板を見る予定だったのだが、断ることも出来ずに彼女に言われるがまま掲示板の前へと歩み寄った。 111、112、113……。  僕の受験番号番号である「123」を張り紙の上に探す。  合格は無理だと言われていたが、悔しくて悔しくて、その日から一生懸命に勉強した。   番号はあるのか、それとも無いのか。  僕は息をするのもやっとな思いで掲示板の前に立っていた。 『きゃーっ!あったよあったよ!あたしの番号!』  重苦しい気持ちでいる僕の右側から、お祭り騒ぎでも起きているのかと思うようなにぎやかな声が聞こえてきた。  彼女は合格したらしい。  僕はどうなんだろう。  結果を知りたいのに、知るのが怖い。  そんな重苦しさでいっぱいになった僕は目を閉じた。 『わーっ!やったやったぁ!』  すぐ隣では、僕の気持ちも知らないまま喧しく騒ぎまくる女の子の声が耳元にキンキンと響き渡っている。  正直な話、こんなに大騒ぎされると気持ちの落ち着かなさも増すし、キンキン声がグサグサと心に突き刺さってくるのでこの場から逃げたいと思った。 『うるせぇなぁ!』  そう叫ぼうかと思ったが、次の瞬間その女の子に両手を掴まれて振り回された。 『やったー!春からは一緒に高校に通えるね!』 (えっ?)  僕が結果を確認する前に、彼女が先に見て一緒に喜んでいるのだった。 きゃーきゃー言いながらいつの間にか自分に抱き付いて喜んでいることに気が付いた僕は、とっさに彼女を引き剥がした。
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