CANDY POP

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『ちょっ!何だよ!』 『あっ、ごめんなさい。この高校を受験したのがあたし一人だったから、知ってる人と一緒に通えるのが嬉しくて!合格おめでと~う!』  目の前で顔いっぱいに笑顔を浮かべながら彼女は喜んでいる。  知っている人と言われても、受験の日に一日だけ顔を合わせた程度ではないか。 それなのに、どうしてこうも馴れ馴れしくされるのか、よく分からなかった。   オロオロしている僕の手から、先ほど彼女から受け取ったキャンディがむしり取られた。  包み紙を剥がして中身が見えたと思うと、彼女は僕の口にキャンディをぽいっと放り込んだ。 『お祝い!ピーチ味だよ!』  あははと嬉しそうに笑いながら、彼女は自分もカバンから取り出したキャンディを口に入れた。  まるで台風みたいな女の子だなと思ったが、僕は彼女から目をはなすことが出来なかった。  甘い味が口の中に広がり、僕は黙ったままドキドキする気持ちと一緒に喉の奥へと流し込んでいった。
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