CANDY POP

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    ☆  朝が来て、昼になり、放課後がやってくる。  毎日が大体同じことの繰り返しで過ぎていく。  ゆりが学校を休んでからもう一週間になる。  彼女は風邪をこじらせてしまったらしく、なかなか復活出来ないでいるらしい。  クラスにキャンディが配られなくなり、その様子にもだんだん慣れてきた。  賑やかな声の聞こえない朝。  笑顔が見えない休み時間。  彼女のいない教室が当たり前のようになってくるのが少し寂しかった。  斜め前のゆりの席を無意識に見てしまっていた僕は、心にぽっかりと穴が開いたような気持ちになっていた。  冷たい風が吹きすさぶ放課後。  僕は、いつもの帰り道とは違う方向へと足を向かわせた。  今朝はかなり積もっていた雪も、放課後になると大部分が解けて道の隅の方にだけ残っている状態だ。  マフラーで覆われていない肌の上を突き刺すような寒さ。隙間風が心の奥にも届きそうに思えたが、一歩一歩踏みしめて僕は歩いた。  どれぐらいの時間歩いたのだろう。 春には青々と葉をつけるのだろうが、今は枯れた葉がカサカサになった大きな木が庭で揺れている。 『雨宮』。そう書かれた表札が目の前にある。僕は上を見上げた。 ピンク色のカーテンが揺れている部屋。僕はゆりの姿をその窓に思い浮かべながら、吹きすさぶ風の中立ち尽くしていた。 彼女の家の前までやって来たものの、チャイムを押す勇気が出ない。 最後に別れたあの日。ゆりの俯いた悲しげな姿が目の前に浮かぶと、心がきゅっとなってきた。
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