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(どうしよう)
迷っていると、突然家のドアが開いた。
「あら、どなたですか?」
ゆりの母親が出てきたのだ。買い物に出かけるところなのだろう。
「あっ、えっと。僕……」
戸惑っている僕を見て、ゆりの母はピンと来たのかにっこりと笑って言った。
「あぁ、あの子のお友達ですね?お見舞いに来て下さったんですか?どうぞ入って下さい」
そう言ったかと思うと、二階に向かって大声で、娘に向かってそのことを叫んだ。
どうしようと思っていた僕の気持ちはさておいて、あっという間に家の中へと入れられてしまった僕は、あれよあれよという間に二階にある彼女の部屋まで通された。
パジャマのままベッドの上に上半身を起こしていたゆりと目が合った僕は、何て言おうか考えてもおらず、急におどおどし始めてしまった。
「あっ、雄樹くん!来てくれたの?」
こちらに気が付いたゆりが、途端に嬉しそうに笑って言った。
いつものツインテールではなく、長い髪はそのまま肩へ垂らされている。
普段とは違う姿の彼女に、僕はハッとしながらも立ち尽くしていた。
「そんなところにいないで、ほらほら!」
ゆりはにこにこ笑いながら手招きしている。
母親が温かい紅茶を入れて持ってきてくれた。
僕はベッドの隅に腰掛けた。
「元気?なわけないか。体調良くないんだもんな」
何も言うことが見つからず、おかしなことを口走ってしまった。
ゆりは相変わらずにっこり微笑みながらこちらを見ていた。
「元気だよ?だって雄樹くんが来てくれたから」
彼女は風邪をこじらせ、熱が下がらずに数日を過ごしたらしいが、ようやくそれも落ち着いたらしいとのことだった。
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