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真相
高級ホテルの部屋で、お酒を飲んでいる二人。何かのお祝いのようで、高そうなお酒を並べ談笑している。表情はとても綻んでいて、ある種の達成感に満ちていた。
「それにしても、本当にお疲れ様。まさか、こんなに上手くいくとは思わなかったよ」
「まあ、私にかかれば当たり前の結果よ。そんな言葉により、報酬の方を弾んでよね」
男は、ニヤリと口元を歪め笑顔を作る。そのいやらしい顔は性格を表しているようで、世界中の黒い闇の部分を凝縮した悪い顔をしていた。
「もちろんだよ。だから、次回もよろしく頼む」
そう言って、グラスの酒を飲み干す。
空になった男のグラスに酒を注ぎながら、女が話をする。
「それにしても、あんな地味な女で良かったの? かわいい子も、いっぱいいたのに」
「あれくらいの方が、視聴者も感情移入がしやすいんだよ。綺麗で満たされた女なんて、見ていても何にも共感できないだろう? 人間なんて自分と同等か、ちょっと劣っている方が見ていて面白いだろう?」
「ふーん。そんなもんなのね」
「ほら、見てみろ。今回の視聴率、歴代一位だ。儲かって仕方ない」
パソコンの画面を見ながら、嬉しそうに自慢する男。すでに、女の興味は薄れていたようで、綺麗な夜景を眺めていた。
「それにしても、実験のモニターなんて嘘をついて、生活の様子を放送しているなんて、参加者が知ったら黙ってないわよ」
「その辺は大丈夫だよ。普通のテレビと違って、会員にならなければ視聴は出来ない。それに参加者には、十分な報酬も払っている。契約書にも細工をしてあるから、訴えられても心配はない。上手くやっているのさ」
現在、テレビは以前のような勢いがなくなってしまった。それは、インターネットが普及しておかげで、テレビ以外の娯楽が充実したことが原因である。
そこでこの男は、高所得者向け、会員限定の動画を配信に目をつけた。裏テレビと言われるコンテンツで私腹を肥やしていた。しかし、その内容はどんどん過激になっていき、今回のような演出を考えるに至った。
「さて、次回はどんな企画にしようかな……」
「本当に、人を殺しちゃうなんてどう?」
「それも悪くないね。視聴者な中には、警察関係者も法曹界の人間もいるから、不可能ではないな。……次回もよろしく頼むよ泉」
「ええ、結城さん」
人の欲望とは、果てしないものだと言う。いつか、こんな世界が来ない事を願うばかりだ。
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