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次に、新婦の亜希が新郎の母親に向けて、手紙を読む番だった。
「お義母さん。
初めて挨拶に訪れた自分を、暖かく心からもてなしてくださり、ありがとうございました。それが、私にとってどれほど嬉しかったことか、言葉で言い表せません。
私の母は、既に亡くなっています。母に甘えることを久しくしてこなかった自分に、新しいお母さんができるんだと実感して、心の底から嬉しかったのです。
なのに、お義母さんからドレスを勧めてもらって、本当だったら喜ばなくてはいけないのに悩んでしまいました。亡き母からもドレスを託されていて、私はどちらを着ればいいのだろうと。すぐにお義母さんのドレスを選べなくてごめんなさい。
でも、この式場のスタッフの方々のおかげで、どちらも母なのだからどちらも着ていいのだと言ってもらい、今日それを実現することができました」
亜希は、これまでの葛藤もすべて素直に話した。
最後に、遠慮しすぎてお義母さんを傷つけるところでした、これからは本当の娘のように自分を叱ってくださいとお願いしながら、涙をぽろぽろこぼした。
そんな彼女の頬へ、黒留袖の新郎の母親がハンカチをそっと当てた。
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