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側に控えていたスタッフが向けたマイクが、新郎の母の言葉を拾い、会場全体に届ける。
言ってくれてよかったのよ、とっくの昔にあなたは私の娘なんだから、ドレスよりもカレーよりも、あなたのことが何百倍も大切――
お母さん! と新婦が抱き着いて泣き、それを囲むように新郎や両家の父親が集まり、二つの家族が一つになった。
その姿に、会場はその日一番の拍手と、感動の涙を流させた。
「やだ、もう、泣けるー!」
会場の一番下手の入退場用のドアを細く開けて外から見ていた美姫は、思わずハンカチで目を覆った。
デザートの準備も終わり、厨房で余裕ができたので、美姫は小沢に頼んで少しだけ休憩をもらってここに来たのだ。
美姫を見つけた苑が、中を覗かせてくれた。
両方のドレスを着ることはあの時思いついた美姫の案で、その場で苑もビクトリアも賛成した。
苑は、それを亜希に納得させ決意させるために言葉を尽くし、ビクトリアはほつれたドレスを縫い直してさらに地味ではなく清楚で厳かに見えるよう、ヘアースタイルを提案し直し小物も手配した。
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