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会場では、イチゴとフランボワーズのムースとジェラートが出されていた。
新郎新婦が客を見送るために出てくる前に戻らないとねと苑に言われ、美姫はそれじゃあと厨房に戻った。
その際、苑から「私に心残りになるような式をさせないでくれてありがとう」と言われた。
ブライダルプランナーとしての苑の矜持を垣間見た気がして、美姫は誇らしい気持ちで厨房に戻った。
そのまま、披露宴後の後始末に入る予定だったのだが。
「おい、局。おまえ、モニターに映ってたぞ」
厨房に足を踏み入れて早々に、鎌口に声を掛けられて美姫はどきっとした。
考えてみれば、新郎新婦の入場のタイミングもあって、モニターには会場の出入り口も映し出されることになっていた。
そこに、会場を覗く美姫の姿が映ってしまったのだろう。
小沢たちシェフは、けらけら笑っていたが、鎌口だけは嫌味たっぷりだった。
「たかが盛り付けの裏方が、でしゃばってんじゃねえよ。研修で一回くらいスカート履いたからってよ」
何だとう? スカートなんか何度も履いてるわ!
美姫の闘争心に火がつくのは早かった。
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