シーン3:二着のドレス

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『成功してよかったわあ』 後片付けで、ケーキ入刀に使われたナイフを桐箱に入れた美姫に、香苗がこっそり囁いた。 「だよねえ。やっぱり結婚式はみんなが幸せにならないと」 『そうなのよ。その幸せに貢献できて、ナイフの精としてはこの上なく満足よ。カレーにナイフは必要じゃあないけれどね』 二人は声を潜めて、くすくすと笑った。 本当に成功してよかったと、あの覗き見た式場内の様子を何度も思い返す。 美姫には、亜希の気持ちがよくわかった。 何故なら。 美姫もまた、母親を失って久しいからだ。 しかし、病気で亡くしたのではない。 美姫の母は、彼女が幼いころに離婚し、家を出て行った。 家と父と彼女を捨てて。
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