他愛無い日々 8

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昔っからコイツは浮かれると本来の目的を見失う。 目移りしやすいんだ。 それゆえに、本命を逃してきた場面は何度も見てきたけど、わかっていてもやめられないんだからしょうがないじゃん。 「それ、いくらだったの?」 「8千6百円」 「交換したらいいじゃん」 「でも、お揃いのパンツも捨てがたいし」 「もう、良い年なんだからお揃いじゃないくても良いだろ? 俺のパンツが何色だろうとそんなのどうだっていいじゃん」 「どうでもよくない! 素肌に身に着けるものがお揃いなんだよ? 私は燿馬とお揃いが着たいんだもん」 「じゃ、それでいいじゃん」 「でも、これじゃ紐パンツじゃないし」 「なんで紐パンツにこだわってんの?」 俺は不思議だった。なぜか、恵鈴は紐パンツに執着している。 「だって……」 恥じらう恵鈴が可愛くて見惚れてしまった。 いや、でも待て。こんな清純派がなぜに紐パンツに固執しているのか、ちゃんと聞かねばならない時が来たようだ。 俺は財布の中身を確認してから、改めて聞いてみた。 「紐パンツだけなら、買ってやれるけど」 「ほんと??」 恵鈴の目がキラキラと輝いた。 「ところで、本当にどうして紐パンツなのか教えてくれよ。 じゃないと、買ってやらない」 「……夢で見たから」 恥じらいながら言う彼女の言葉の意味を飲み込むのに、60秒以上かかった。 恵鈴はおそらく、俺とのことを夢に見たって言ってるんだ。 夢ならあれから何度も見てる。 俺が見る夢の恵鈴は、いつだって真っ裸だったはずだけど…って。 「っちょ……待て待て待て。お前、俺を誘おうとしてるのか?」 「だって。夢の中ではもう何度もしてるし、夢と現実の区別なんて関係なくなってきちゃって…」 「夢は夢!!現実は現実!!その境界線はしっかり引いて置かなくちゃ!」 俺が必死にそう説得すると、恵鈴は目を細めて俺を睨みつけた。 なぜかその顔にときめく俺。 やばい、認めたくないが親父の気持ちがすっげぇわかる。 なんだ、この可愛い生き物は。 なんで、そんな無防備に感情を暴露するんだ? 素直すぎるだろ? 「欲しいの」 甘ったるくて切ない声で、そんな…そんな…そんな可愛いことを!!!
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