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昔っからコイツは浮かれると本来の目的を見失う。
目移りしやすいんだ。
それゆえに、本命を逃してきた場面は何度も見てきたけど、わかっていてもやめられないんだからしょうがないじゃん。
「それ、いくらだったの?」
「8千6百円」
「交換したらいいじゃん」
「でも、お揃いのパンツも捨てがたいし」
「もう、良い年なんだからお揃いじゃないくても良いだろ?
俺のパンツが何色だろうとそんなのどうだっていいじゃん」
「どうでもよくない!
素肌に身に着けるものがお揃いなんだよ?
私は燿馬とお揃いが着たいんだもん」
「じゃ、それでいいじゃん」
「でも、これじゃ紐パンツじゃないし」
「なんで紐パンツにこだわってんの?」
俺は不思議だった。なぜか、恵鈴は紐パンツに執着している。
「だって……」
恥じらう恵鈴が可愛くて見惚れてしまった。
いや、でも待て。こんな清純派がなぜに紐パンツに固執しているのか、ちゃんと聞かねばならない時が来たようだ。
俺は財布の中身を確認してから、改めて聞いてみた。
「紐パンツだけなら、買ってやれるけど」
「ほんと??」
恵鈴の目がキラキラと輝いた。
「ところで、本当にどうして紐パンツなのか教えてくれよ。
じゃないと、買ってやらない」
「……夢で見たから」
恥じらいながら言う彼女の言葉の意味を飲み込むのに、60秒以上かかった。
恵鈴はおそらく、俺とのことを夢に見たって言ってるんだ。
夢ならあれから何度も見てる。
俺が見る夢の恵鈴は、いつだって真っ裸だったはずだけど…って。
「っちょ……待て待て待て。お前、俺を誘おうとしてるのか?」
「だって。夢の中ではもう何度もしてるし、夢と現実の区別なんて関係なくなってきちゃって…」
「夢は夢!!現実は現実!!その境界線はしっかり引いて置かなくちゃ!」
俺が必死にそう説得すると、恵鈴は目を細めて俺を睨みつけた。
なぜかその顔にときめく俺。
やばい、認めたくないが親父の気持ちがすっげぇわかる。
なんだ、この可愛い生き物は。
なんで、そんな無防備に感情を暴露するんだ?
素直すぎるだろ?
「欲しいの」
甘ったるくて切ない声で、そんな…そんな…そんな可愛いことを!!!
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