他愛無い日々 11

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他愛無い日々 11

私はしっかり者のつもりで頑張っているけれど、実はとってもおっちょこちょいなところがある。考え事をしながら何かをしていると、手にもっていたはずのものをどこかに置き忘れて失くしてしまったり、さっきまで覚えていたことをいざ何かをしようとした途端に頭が真っ白になってしまったりする。 お母さんとお爺ちゃんが死んで、特にそれが酷い。 自分でも引いてしまうほど、酷いから子供たちはかなり私を心配してくれているみたい。 「ほら、何考えてる?今は、心をこっちだけ向けて」 「うん」 夫は優しいけれど強引だ。 私が落ち込んでいると、物凄く頑張って元気づけようとしてくれる。 その優しさは嬉しいけど、感傷に浸る時間も本当は大事にしたい。 私は目を閉じて、晴馬が導いてくれる心地よさに波長を合わせていく。 私がこの世界から消えて 彼の世界に交じり合うように身も心も委ねると 思考は止まりただ彼が揺らす波間に浮かぶクラゲのように漂いながら 水と空気と光と闇に溶けて 晴馬と完全にひとつになるの。 体とか 男女とか 年齢とか 肌と肌という隔たりも 私とあなたという谷間も 全て気にならなくなって なんだろう 私達はきっと 生まれる前は ほんとうにひとつの魂だったのかもしれない 離れたから恋しくて 違う体に入っているから触れたくなって 別々の世界を生きているから交じり合いたくなる ひとつになりたくなる あなたに帰りたくなる きっと、いつか私達にも死という大きな慟哭がやってきて 自分を見失うほど悲しみに打ちひしがれてしまうだろうけど それを恐れてひとつになれないなんて そんなの意味ないよね 深く繋がって揺れながら高ぶっていく あなたの顔も声も熱も全部私にぶつけて弾けていく それがこんなにも嬉しくなる 私にとってあなたが生きる意味であるように あなたにとって私が生きる意味でありたいと 願いながら今夜も 「だめだ!まだ寝るな!!」 「………晴馬のバカぁぁぁ」 やっぱり強引な夫に朝まで愛されてます。 End
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