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他愛無い日々 4
高校二年になってから燿馬はさらに背が伸びた。
並んで歩くと見上げる角度が変わってしまって、もうすぐパパの背を追い越しそうな程。肩幅もパパと変わらないし、喉ぼとけもくっきりと浮かんでいるし、制服の半そでから伸びた細い腕は血管が浮いていて、すごく男らしくなったと思う。
触れると温かくて、大きな手をつなぐとまるで包まれているみたい。
昔は、ほとんど差なんてなくて。
私よりも内気ですぐに歩き疲れてはママに抱っこされてばかりの兄。
それが今では私の重たい鞄まで持ってくれて、
しかもちゃんと手を繋いでくれるんだからすごいと思う。
「重たいのにごめんね」
「……ああ、別にこれぐらい重くもないけど」
「だって、二人分だよ?」
「丁度、筋トレになる程度だから、気にすんな」
ぶっきらぼうだけど優しい。
嬉しくて、つい笑っていると燿馬は向こう側に顔を背けてしまった。
耳も首もかすかに赤い。
なんで、照れてるんだろう?
「どうしたの?」
「…べっつにぃ」
言いたくないみたいだ。
私は燿馬の左手を両手で握りしめて、真正面に回り込んだ。
長い髪が風に揺れて、塞がった両手のせいで顔にかかったものを払おうと首を回して髪を躍らせたとき。
たなびく髪の向こう側で、目をキラキラと輝かせている燿馬と目が合った。
そしてさらに顔を赤くしてしまった。
「……どう」「お前さぁ、そうやっていろいろと俺を誘惑するの、やめろよ?」
久しぶりに大声を張り上げて私に抗議する。
しかも、誘惑って……。
そんなに誘ってるつもりなんて、ないのに……!
なんか、嬉しくて恥ずかしくて私まで顔が熱い!
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